2013年度ノーベル生理学・医学賞が発表されました!
こんにちは。
ディスカバリー研究所の戸金です。
今年も科学研究の最高峰、ノーベル賞の発表が始まりました。
ディスカバリー研究所ではノーベル賞研究の内容をわかりやすくまとめました。
保護者様とお子様とご一緒にどうぞご覧下さい。
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正しく届け!ミクロの世界の輸送システム
初めて書いたラブレター、意中の人にしっかり想いを伝えたい。でも、万が一間違ったところに届いてしまったらどうしよう。みなさんのからだの中でも、大切なものを正しい場所に届けるため、とても重要な仕組みが働いています。今年のノーベル生理学・医学賞は、細胞で起こる物質の輸送の仕組みについての研究成果に対して授与されました。
人体は水の占める割合が体重の60~70%、次に多いのがタンパク質で15%~20%、その種類は10万種類とも言われています。それらタンパク質はすべて細胞内のリボソームで作られますが、その場で働くとは限らず、例えば、細胞膜に移動したり、消化酵素のような分泌物は細胞外に放出されたりします。そのような細胞内外の物質の移動の仕組みを明らかにしたのが今回のノーベル賞受賞研究です。粗面小胞体上のリボソームで作られたタンパク質は小胞体に入ります。そして移動の際には小胞体からくびりとられたシャボン玉の膜のような小胞に包まれます。小胞の膜にはv-SNAREというらせん状のタンパク質が存在します。そして、移動しながらペアとなるt-SNAREを持つ細胞あるいは細胞小器官の膜を探します。正しいペアを見つけると、SNARE同士がジッパーのように噛み合って手をつなぎ、膜同士が融合し、小胞が持っていたタンパク質は正しい場所に移動することができるのです。このSNAREによる膜融合の仕組みは今回のノーベル賞受賞者のJames Rothman氏により発見されました。Randy Schekman氏はこの輸送にかかわる遺伝子を酵母の実験より見つけ出し、Thomas Südhof氏は上記2名が解明した輸送機構をいつ働かせるかをコントロールする仕組みを神経細胞の研究により明らかにし、3氏はノーベル賞を受賞しました。
面白いのは細胞膜や小胞体などの細胞小器官が持つ「膜」が、タンパク質などの物質を正しい場所に導くカギだったことです。2011年のノーベル生理学・医学賞を受賞した自然免疫の仕組み、2012年のノーベル化学賞を受賞したGタンパク質共役型受容体の研究に続き、細胞の「膜」にかかわる研究がノーベル賞を受賞しました。現在は細胞内、細胞間で起こっている情報交換の仕組みの解明に世の中の関心が向いているのかもしれませんね。
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一昔ほど前まで、ヒトゲノム計画などDNAや遺伝子の研究が盛んでしたが、今では細胞内部や細胞同士の情報交換・コミュニケーションの仕組みを調べる研究が進んできたようです。
生き物はまだまだフシギだらけ。
ディスカバリー研究所でも、どんどん新たなフシギに出会いましょう!
戸金