ホーム サイエンスブリッジニュース SBN190_新たな全能細胞の発見!STAP細胞とは?

SBN190_新たな全能細胞の発見!STAP細胞とは?

958
0

190 みなさま、1月29日の夕方に日本発!世界中を駆け巡ったニュースをご覧になったでしょうか?これまでよりも簡単な方法で、より効率よく「全能細胞」を作る方法が発見され、世界トップクラスの科学論文雑誌『Nature』上で報告されたのです。発見者は理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダー。STAP(スタップ)細胞と名付けられたその細胞は、iPS細胞やES細胞とはどのように違うのでしょうか。

STAP細胞は、万能性を持たない細胞を30分ほど酸性(pH5.7)の溶液に入れて培養し、その後iPS細胞の培養でも使われるLIFと呼ばれる因子を含む培養液で育てることで、生まれてきます。この「酸性溶液で培養するだけ」という手軽さが、遺伝子導入が必要なiPS細胞や、受精卵から取り出す必要があるES細胞と大きく異なる点です。また、iPS細胞が作製のための処理を行った細胞のうち、わずか0.1%ほどしか生まれないのに比べ、この方法だと細胞の5になったというから驚きです。数十倍もの作製効率を持つわけですね。さらにiPS細胞は「多能性細胞」と呼ばれるのに対し、STAP細胞は「全能細胞」あるいは「万能細胞」と呼ばれています。この違いは、発生初期に母体と胎児とをつなぐ胎盤になる能力があるかどうかで分かれます。iPS細胞やES細胞は胎盤になることができないのに対し、STAP細胞は胎盤にも分化することができます。このことは、STAP細胞はより未分化度の高い状態にまで巻き戻っていることを示しているのでは、と考えられています。STAP細胞のおもしろい点はそれだけではありません。この細胞、作製したままの状態では増殖能力がiPS細胞やES細胞より低く、あまり増えていかないそうですが、副腎皮質ホルモンを添加した状態で培養すると、増殖能が高くなる代わりに、胎盤への分化能を失ってしまうとのことです。どのようにして、この変化が起きているのか、基礎生物学の視点からも興味深いですね。

このように様々な点から話題となったSTAP細胞ですが、まだ実証されたのは生後1週間以内のマウスを使った実験だけ。ヒトの細胞でも作れるのか、また先行するES細胞やiPS細胞で実現されていた様々な組織の細胞への分化方法を活かせるのか、まだまだ調べなければならないことはたくさんあります。日本初の大きな成果がどのように実を結ぶのか、目が離せませんね!

参考:http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12968.html

記者コメント:電車で帰宅途中にスマホでこのニュースを知り、駅から家まで走ってテレビつけました!(西山)

[table id=1 /]

吉田 拓実/Takumi Yoshida 教育開発事業部 部長 東京大学農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程修了 農学(博士) 専門は植物の環境ストレス応答遺伝子の研究 実験教室、スクール運営、企業の教育CSRなどを担当 現在は、社会全体で盛り上げていく科学教育の形を研究中