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2014.02.17 サイエンスブリッジニュース

SBN156_クチクラワックスが植物の器官サイズを調整する

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5月は緑が色濃くなる季節。ちょうどこれから梅雨にかけて、植物たちはいっせいに葉を広げ、大きく成長していきます。ぐんぐん大きくなーれ!と願っても、ジャックの豆の木のように空まで伸びることはありません。植物の大きさはいったいどのように決められているのでしょう?

 

実は植物の大きさを決定するしくみはまだよくわかっていません。最近、奈良先端科学技術大学院大学の梅田教授らは植物の大きさを調整する新しい仕組みを発見しました。

 

私たちの体が皮膚で覆われているように、植物の表面は油分を多く含むクチクラというワックス層で覆われています。ツバキのように葉がテカテカしている植物はクチクラがよく発達しています。このクチクラは水分の蒸発や病原菌の侵入を防ぐ役割を持つことが知られていましたが、植物の大きさを決める役割も果たしていることが明らかになったのです。

 

クチクラには極長鎖脂肪酸(VLCFA−very long chain fatty acid)と呼ばれ、20個以上の炭素が並ぶ非常に長い側鎖を持つ脂肪酸が含まれています。梅田教授らは、シロイヌナズナでVLCFAの表皮での合成を完全に阻害すると成長阻害が起きる一方で、わずかに阻害すると植物サイズが大きくなることを見つけました。その原因を詳しく調べてみると、維管束で植物ホルモンサイトカイニンの量が増加し、細胞が過剰に増殖していることがわかったのです。これは、正常な植物ではVLCFAがサイトカイニンの量を制限するように調整していることを示しています。

 

クチクラ成分であるワックスが植物ホルモンを調節するという現象は、これまでまったく知られていない新しい発見です。植物の成長戦略にはまだまだ私たちの知らないしくみが隠れていそうです。

参考:http://www.naist.jp/pressrelease/detail_j/topics/1506/

記者コメント:今回紹介したのは私の出身ラボの論文です。植物の成長のしくみはとっても複雑で、美しいです。街を歩きながら道端の植物たちにぜひ目を向けてみてください!(中嶋

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