ホーム サイエンスブリッジニュース SBN165_頭部から頭が再生するのはなぜ?~不死身の秘密、解明!~

SBN165_頭部から頭が再生するのはなぜ?~不死身の秘密、解明!~

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165いくら切っても死なず、切られた断片が1匹の個体に再生し、増殖する不死身の生物・・・。いかにもSFの世界に登場しそうな生き物ですが、現実世界に存在します。水の中に棲息し、目が可愛らしいプラナリアは知る人ぞ知る、そんな変わった生き物です。研究の歴史は古く、頭を失ったプラナリアからは頭が再生し、しっぽを失ったものからはしっぽが再生する、そのように正しく再生できる要因が調べられてきました。

ショウジョウバエの遺伝子研究でノーベル賞を受賞したトーマス・ハント・モーガンは、もともとプラナリアを研究しており、この正確な再生の秘密は、ある物質が頭部-尾部方向に異なる濃度で分布しており切られた位置がわかるからだと仮説を立てました。その仮説から100年以上、決定的な要因は見つかっていませんでしたが、京都大学の阿形教授らのグループが、ついに仮説を証明しました。

プラナリアの頭部の再生には、ERKというタンパク質が働いていることがわかりました。ERKの働きは頭部で強く、尾部側ほど弱いということがわかったのです。ではなぜこのような働きの違いが生まれるのでしょうか。その理由は、尾部側ではnou-darakeとβ-カテニンという遺伝子の働きにより、ERKの働きが弱められていたためでした。その証拠に、nou-darakeとβ-カテニンの働きを抑制すると、全身でERKが働き、全身が頭部になるという現象が起こったのです。100年前の仮説が正しかったことが示された瞬間でした。

nou-darakeやβ-カテニンが、ERKの働きをどのように弱めているのかはこれからの研究課題ですが、ERKの働きが前方で強く後方で弱いというこの仕組み、高校生物で学ぶ、ショウジョウバエのビコイド遺伝子が頭部側で強く働く仕組みととてもよく似ています。トーマス・ハント・モーガンが注目したこの2種類の生き物は、発生・再生の分野の研究を引っ張り、これからの医療である「再生医療」で大活躍すると思います。

(2013年7月31日に教育応援先生向けに配信されたサイエンスブリッジニュースです)

参考http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130725_1.htm

記者コメント:nou-darake=脳だらけ。ちょっとシャレを効かせた遺伝子の命名法はショウジョウバエ研究でポピュラーな方法です。やはりプラナリアの世界とは近しいものがあるのでしょうか。(戸金)

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吉田 拓実/Takumi Yoshida 教育開発事業部 部長 東京大学農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程修了 農学(博士) 専門は植物の環境ストレス応答遺伝子の研究 実験教室、スクール運営、企業の教育CSRなどを担当 現在は、社会全体で盛り上げていく科学教育の形を研究中

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