光のほうに曲がる、新しいバイオプラスチックの開発
暑かった夏ももう終わり。夏の花といえばヒマワリですね。ヒマワリは「日回り」が語源と言われ、生長期の若い葉が太陽を追いかけるような動きをすることに由来しています。ヒマワリだけでなく、多くの植物は太陽の光を受けることで、生長を促すオーキシン濃度が茎の内部で変化し、太陽に向かって茎を伸ばすことが知られています。今回、植物のように光に向かって形を変えるプラスチックが開発されました。
北陸先端科学技術大学院大学の金子准教授らは、環境に影響を与える二酸化炭素を低減させる方法のひとつとして、バイオプラスチックの研究を行っています。バイオプラスチックは、空気中の二酸化炭素を取り込んだ植物や微生物を原料とします。二酸化炭素由来の炭素を長期間プラスチックに閉じ込めることで、環境中の二酸化炭素を減少させることにつながります。しかし、現状のバイオプラスチックは耐熱性や加工のしやすさという点で石油由来のものに劣っており、広く普及していないことが課題です。そこで金子准教授らは、原料として桂皮酸に注目しました。桂皮酸はあらゆる植物細胞に含まれるポリフェノールの一種で、光によって性質が変わる光機能性を持っていることが知られています。そこで、桂皮酸を原料に、光で形を制御できるという機能を持つ、新しいバイオプラスチック開発を試み、今回、4-ヒドロキシ桂皮酸とコハク酸を原料としたバイオポリエステルの合成に成功しました。このバイオプラスチックの性質を調べると、紫外線を当てた方向に曲がりました。それだけでなく、より波長の短い紫外線を当てると元の形に戻る、そして熱を与えると別の記憶した形に戻るという形状記憶素材としての性質も持っていることがわかりました。複数の形を記憶できる形状記憶素材はほとんど例がなく、極めて高機能なバイオプラスチックが誕生したのです。
今回開発されたバイオプラスチックは、光を制御することで非常に複雑な形に成形することができました。将来、部屋の中で太陽の光を追いかける造花のインテリアもできるかもしれませんね。
(2013年9月3日に教育応援先生向けに配信されたサイエンスブリッジニュースです)
参考http://www.jaist.ac.jp/news/press/2013/post-371.html
記者のコメント:プラスチックといえば力をかけないと曲がらないほど頑丈、そして熱にかけたら変形して使い物にならなくなるというイメージですが、光や熱をうまく使えるプラスチックがあるのですね。驚きました。(戸金)
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