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2014.03.11 サイエンスブリッジニュース

太陽光発電に近赤外光が仲間入り

173 いつも使っている電卓、電池が入っていないのに使えるのを不思議に思ったことはありませんか?それは電卓には小さな太陽電池が埋められており、明るい場所なら電卓に十分な電力を得られるようになっているためです。しかし現在、まだ太陽電池は光から電気への変換効率に課題があり、普及にはさらなる改良が求められています。今回、変換効率を向上させる新しい技術が発表されました。

北海道大学電子科学研究所・三澤教授の研究グループは、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存しない社会を創ることを目指し、太陽から降り注ぐ光エネルギーを余すところなく利用する太陽電池について研究を続けてきました。太陽光は目には見えませんが、様々な波長の光からできています。これまでの太陽電池は波長が短くエネルギーが高い紫外線や可視光線を電気に変える電極が開発されてきました。一方、太陽光のうち近赤外線や赤外線はエネルギーが低いため、あまり使われていませんでした。しかし、太陽光のうち近赤外光と赤外光の割合は46%とも言われているため、研究チームはこれらの光を効果的に利用することを目指し、電極に注目して研究を行いました。太陽光を受け止める電極には金属が使われており、光を反射する性質があります。おもしろいことに、金属をナノサイズまで小さくすると逆に光を吸収する性質を持つことが知られており、光アンテナ効果と呼ばれています。そこで、太陽電池の電極に光アンテナ効果を利用すれば、近赤外光のエネルギーを電極に集めることができ、十分な電圧を出せるのではないかと考えました。そして酸化チタン電極ナノサイズの金の粒子を組み込み、近赤外光を照射したところ、水を電気分解ができるほどの電圧の電気を作り出すことに成功しました。水の電気分解で生じる水素は持ち運び可能なエネルギーのため、近赤外光を実用的なエネルギーに変えられたという証明になります。このことより、太陽光発電の発電効率が大幅に上昇することが期待できます。近頃は携帯電話、ノートパソコン、タブレット端末など持ち運びながら扱う電子機器が増えており、充電器を手放せません。しかし将来、それらも電卓のように充電を気にせず使える日が訪れるかもしれませんね。

(2013年9月24日に教育応援先生向けに配信されたサイエンスブリッジニュースです)

参考http://www.hokudai.ac.jp/news/130906_pr_es.pdf

記者コメント:今回登場した近赤外光というのはハロゲンヒーターから出ている光でもあります。あの暖かい光がなんでエネルギーが低いの?と思った人、調べてみると新しい発見がありますので、ぜひぜひ。(田中)

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