NEST LAB.受講生の海外学会体験記ーサイエンスキャッスルフィリピンで研究発表に挑戦
NEST LAB.では、マスターコース&ドクターコースの小中学生の最後の授業で親会社の株式会社リバネス主催の中高生の学会「サイエンスキャッスル」で少し先輩の中高生研究者にまじって、研究発表する機会があります。今回、ドクターコースの近藤誠一さんが、日本のサイエンスキャッスルに参加した上で、さらなるチャレンジをしたいと、今年初開催をするサイエンスキャッスルフィリピンでの発表に挑戦したいと申し出て、参加をされました。今回は、本人から実際に参加しての気づきについてエッセイにまとめていただいたので、紹介させていただきます。ぜひ、研究開発が好きなNEST LAB.の受講生はもちろんのこと、小中高の研究者の皆さんにはぜひ海外の研究発表を通じて、地球の仲間を作ってもらいたいと思います。
僕は今回、初めての海外発表、サイエンスキャッスルinフィリピンにチャレンジしてきました。
フィリピンまでの飛行時間は約5時間。マニラ空港にはリバネスのスタッフの方々が迎えにきてくださいました。
次の日の朝、会場の大学に連れて行っていただき、開会までホールで過ごしました。フィリピンやマレーシアの学校からグループで参加している人が多く、僕が日本人であることが見た目からわかったらしく、さっそく話しかけてくれた子もいました。
説明は全部英語で結構早口なのですが、事前にzoomの説明会があったり、大体が日本の大会と同じ形式なので、なんとなくわかる感じでした。スタッフの人達も親切で、いろいろ教えてくれました。
日本の大会と違ったのは「SPLASH」という、約90秒のPRがあることです。他のことは意外とやれると思っていた僕も、ここだけは少し苦戦しました。短い時間しかないので、言いたいことを全部入れられるわけではないし、ちゃんと言えたら収まるものも、英語なのでつっかえてしまうことがあり、そうすると巻かなければいけなくなってしまいます。準備してきたつもりだったけれど、結局ギリギリまで調整に追われることになってしまいました。こういうものは大筋だけ決めて、フィーリングでやった方がいいと反省しました。
ポスター発表は屋根のある屋外の会場で、ホールとの気温差がすごくて、制服のジャケットを脱ぐタイミングを逃して、体力を消耗しました。
ランチ休憩のとき、会場大学のカフェテリアでリフレッシュできたのは、すごくよかったです。
僕の発表に興味を持ってくれたのは主に大人の人で、かなり長時間質問してくれた人もいました。嬉しかったのは「このプログラムはフィリピンの問題にも合っている。とてもいいプログラムだよ」といって肩をポンと叩いてくれたり、「自分でプログラムしたのか。頑張ったね」と握手してくれたりした人がいたことです。言葉だけじゃなく、動作で激励をしてもらえると、後からじわじわ嬉しいし、思い出すたびにあったかい気持ちになりました。
またフィリピンでは、2つの偶然の出会いがありました。
まず一つは、僕の向かいで発表していたグループのうちの一人が、フィリピンを襲った台風ヨランダをきっかけに研究を始めたという話を聞いたことです。実は僕がフィリピンのサイエンスキャッスルに応募しようと思ったきっかけは、幼少期にヨランダのニュースを見て衝撃を受け、大使館で募金をしたところ、大使館を通じてフィリピンから感謝のメッセージが届いたという経験があったからです。
僕は大きくなって、このお金が本当は全然フィリピンの人達を救えたわけではなかったことを知り、それでも感謝の気持ちを表してくれた人たちはすごく清らかだと感動しました。そしてそこから漠然と、いつかお金ではなく何かきちんと人のために役立つことをしたいと考え始めるようになったのです。だから、NEST LAB.の所長の藤田先生から「フィリピンの人達は混雑にとても関心がある」と聞いて、僕の研究がもしフィリピンの人達の役に立つなら、頑張って発表に挑戦してみようと決めました。
もう一つの出会いは、フィリピンにおける混雑の例として知った「ブラックナザレ祭」に関係があります。道路を封鎖しなければならないほどの混雑が毎年発生するこのキリスト教のイベントが、エントリーが決った頃に調べたフィリピン大使館のホームページにも掲載されていたし、フィリピンに旅立つ直前も日本のニュースで報道されていました。SPLASHでもそのことに触れました。するとサイエンスキャッスルが終わった翌日、空港までの送迎と観光をお願いした運転手さんが、なんと毎年ブラックナザレ祭に参加している人でした。ガイドさんと話をしていたら、突然興奮しながら現地語で運転手さんと話し出したので、一体なにごとかとびっくりしたのですが、そのことがわかって今度はこっちがびっくりしました。
この方は、お子さんが4歳の時に大きな病気になって、それが治るように祈ったら奇跡的に治ったことから、それ以降ずっとその祭りに参加するようになったのだということです。こんなふうに本気で神様に祈ることや、感謝の気持ちで何かをずっと続けるところが、フィリピンらしさなのかなと思ったりしました。行く前はフィリピンの治安や、日本語が通じない環境であることに不安を感じていたけれど、この二つの出会いのお陰もあって、帰ってきた時には、フィリピンの人達がとても純粋で一生懸命だという印象が、一番強く残りました。
英語が全部わかったわけではないけれど、一緒に発表に緊張したり、一緒に写真を撮ったり、同じ場所にいることで自然と友達になれた人もいました。翻訳の機械は一応持って行ったけれど、ほぼ頼らなかったし、何とかできた実感があります。いざとなったら使えるという安心感が、それじゃあやれるところまでやってみるかという思い切りにつながったのだと思います。
NEST LAB.の皆さんも、きっと行ってみればなんとかなります。これから機会があったら、頑張ってエントリーしてみてください。